街のタカラは人のチカラ
ポリテックビジョンin舞鶴2023 開催
モノづくりの未来担う若者人財の地元定着に道しるべを
投稿日時:2023年03月03日(金)
舞鶴税関支署がこのほど発表した令和4年分の京都舞鶴港貿易概況では、輸出品目において昨年度112億円で2位だった船舶類がランクから姿を消した。これはJMUの商船建造撤退によるものに他ならないが、この変化がもたらす影響は短期的な市内経済だけにとどまらない。長年にわたって蓄積された当地のモノづくり技術継承にもまた、確実に暗い影を落としつつある。
すそ野の広い造船業。旧海軍時代から当地のモノづくり技術は連綿と継承され、今日の都市基盤を担う重要なピースの一つとなってきた。
しかし、転換点は2021年に突然訪れた。存続を危惧する声は以前からあったものの、意表を突く形で発表された撤退劇。当時の多々見良三市長は、「(従業員約300人が配置転換となることで)造船所の約7割が空き地になる。下請けを含めた地域のダメージは甚大で、地元の首長として心苦しい」と述べた。
当時の予測通り、商船建造撤退が当地にもたらした影響は非常に大きいと言わざるを得ない。造船業を縁の下で支え続けた中小の製造業は苦境に立たされ、製造技術を学んだ若者の受け入れ先となることができない悪循環が生まれつつある。
そんな中、近畿職業能力開発大学校京都校で24日と25日の両日、「ポリテックビジョンin舞鶴2023」が開かれ、未来のモノづくりを担う若者たちが日ごろの研究成果を発表した。製造技術の学び舎として存在価値を高め続ける同校では、揺れる市内経済界に左右されることなく、学生たちがモノづくりの現場での未来予想図を描き続けている。
【進化し続ける学び舎】
「今できる最高のものづくり」というテーマを掲げたイベントでは、学生による成果発表を中心に卒業生による特別講演なども実施。また、コマをどれだけ長く回せるかなどを競う生産技術課によるコマ大会や、電子技術科によるライントレース大会といった「ものづくりコンテスト」も行われた。
成果発表が行われた「万願寺とうがらしの自動選別機」では、生産技術科と電子情報技術科の学生が連携して選別機を製作。ベルトコンベアを通ってカメラの前を通ったとうがらしが、ディープラーニング技術を使った画像処理による選別を受け、等級ごとに自動的に選別する製品を完成させた。
この研究は農家からの依頼によるもので、同校の吉村誠課長は、「農家の負担軽減、作業の効率化を図り、慢性的な人手不足の解消につなげるための製品。明確な課題解決につながるもので、関わった学生もやりがいをもって取り組んでくれた」と話した。
この日は、委託型実習(インターンシップ)により地元企業などで1か月の研修を受けた学生からの報告も実施。少子高齢化がこれまで以上に進んでいく将来、地元で学んだ若者たちが地元で働ける街となるよう、行政も関与した積極的な受け皿整備に期待したい。
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