地域の力で明日に光を
折原町内会・80周年の節目に住民躍動
地区の発展を皆で願い
5年に一度の「菊みこし巡行」
投稿日時:2023年01月01日(日)
長引くコロナ禍に加え、近年に例を見ない物価高騰。私たちの社会はかつてない苦境に立たされているが、 そんな時に人々の心に明かりを灯すのは、やはり人でしかない。当地でも、「人の力」、「地域の力」で街を元気づけようとする取り組みが連綿と行われている。
昨年11月。西舞鶴の老舗商店街を威勢の良い行列が神輿と共に練り歩いた。神輿を出したのは折原町内会。80周年を迎える町内会で長年に渡って受け継がれてきた「小男稲荷神社」の秋祭りだ。
西舞鶴駅近くの折原地区では、昭和16年に自治会が発足した折、それまで引土町内会の管理だった「小男稲荷神社」の管理を引き継いだ。神社の成り立ちに関して語り継がれた逸話がある。参勤交代で江戸に勤務していた田辺の殿様が、お国自慢の力士を集めて相撲大会を開催することになった折、お屋敷で風呂焚きをしている小柄な男が名乗り出て快進撃をおさめたが、いざ田辺に帰ってくると姿が見えなくなり、狐の化身だったと信じられ、その後祀られるようになったというものだ。商家の多い折原地区は、農家の多かった引土地区よりも稲荷神社への信仰があついと考えられたのか、以降毎年11月3日に祭礼を執り行うのが恒例とされてきた。
なかでも5年に一回開催される「菊みこし巡行」は、戦中戦後しばらくは中断し、同神社が折原地区の管理になって初めて、昭和31年に開催された。同年は地区の商店が「折原商店会」を結成し、商売繁盛を盛大に祈願したという。
以来絶えることなく行われた巡行だったが、開催の年となった一昨年はコロナ禍に配慮し延期に。奇しくも、自治会発足80周年の昨年、菊みこし巡行も執り行われることになった。
【時代変われど気持ちは変わらず】
地元住民が待ち望んだ祭りの日、朝から雲一つない晴天が神輿巡行に花を添えた。この日に向けて菊の造花千本で飾り付けられた神輿。色鮮やかな神輿を担いだ住民が、威勢の良いかけ声と共に町内をくまなく練り歩く。菊みこし巡行の実行委員長を務めた松本昭司さん(81)は「以前は生花で飾り付けたのでもっと大変でしたが、造花でも出来が良くてきれいです」と話し、「時代とともに変わることもあるが、祭りに携わる住民の心意気は何一つ変わりません」と充実感を漂わせていた。
神輿は細い路地にまで入り込み、家々の前で担ぎ手によるパフォーマンスが繰り広げられた。100㎏を超える重さがある神輿は、家内安全などを願う口上に合わせて胴上げのような状態に。迫力ある神輿の乱舞に、見守る住民からは思わず笑顔があふれ出していた。
「コロナでたまったうっ憤が、消えてなくなったようです」と笑顔を見せる担ぎ手に、「神輿に元気をもらった。良い運気が舞い込んできそうな気がします」と笑みをこぼす住民。秋晴れの下で、町内には楽しげな笑い声が響いていた。
神輿はこの後、休憩所で京橋町内会の神輿と合流。引土町内会から分区してから5年間、京橋町内会は折原区民だった歴史を持つ。
折原町内会の堀嶋輝一会長は、「受け継いできた歴史に思いを馳せるこうした機会はとても大切。これからも近くて頼れる町内会として、共存共栄を願いたい」と話していた。
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