大人の都合で右往左往
空虚に響く聞こえの良い言葉
投稿日時:2022年06月07日(火)
舞鶴市は教育振興大綱において育てたい子ども像を「ふるさと舞鶴を愛し 夢に向かって将来を切り拓く子ども」と定めている。またその中では「コミュニケーション能力を有し、相手を尊重し思いやり、親や周りの人に感謝する子ども」「善悪の正しい判断を持ち自らを律することができる『自律』と自ら目標を定め自立していく『自立』とを備えた子どもを育成する」ともある。そして、これらを実現するための基本理念には、さも立派な言葉が並ぶ。しかし、学校が子どもの育成にあたる中で、これらは果たしてどこまで深く意識されているのか。聞こえの良い目標や報告とは裏腹に見過ごされた「何か」はないか、今一度改めて、足元を見つめ目標を再認識する必要はないだろうか。今回は、本紙に寄せられた市民の声を元に、起こった事実をお伝えしたい。
いまだコロナ禍で様々な行事が“以前のように”とまではいかないものの、縮小するなど工夫する中で活発な日常をとり戻しつつある。5月28日には、東舞鶴公園陸上競技場で「第46回舞鶴市小学生陸上競技大会」が開催された。本紙編集部に、連日電話や来訪で問い合わせがあったのはこのあとだ。それら声の主は「小学生陸上大会の結果はいつ掲載されますか」といい「子どもが(孫が、親戚が)入賞したんです」と声を弾ませるものばかりだった。とはいえ本紙が得る情報は、市内すべての行事を網羅しているわけではない。通常、様々な行事や案内・スポーツ結果などは、主催側から送られるなどして掲載している。
しかし問い合わせのあった陸上大会については「大会結果」はおろか、開催を知らせる案内さえ届いてはいなかった。「結果」が届き次第掲載する旨を伝えるも中には、本紙が意図的に載せないと捉えた人で「なぜ載せてくれないのか、楽しみにしているのでなんとかお願いします」と言って受話器を投げ置くようなものもあった。
今回の件に関する問い合わせの多さは、コロナ禍で十分な練習を重ねることさえままならない中、諦めず挑戦した子どもたちを思えばこそのものであり、応援する気持ち、励ましてやりたい気持ちの表れとも受け取れた。
編集部としても行事ごとが減ったコロナ禍で、子どもたちが褒められたり励まされたりする機会は重要と捉え、このままではいけないとの思いがあった。また持ち回りで事務局などが変わるような場合「どこに知らせてよいのか分からない」といった可能性も、この時はまだ残されていた。
事務局が分からず、まず市スポーツ協会に問い合わせたものの要領を得ず、市広報広聴課に問い合わせてみることに。「ここでは把握していない」としながらも調べて折り返すとの回答。その後すぐに連絡があり、ようやく舞鶴市小学校体育連盟の主催で、余内小の校長が同連盟の会長であることが分かった。そこで今回の経緯とともに「大会結果」を求める連絡をするも電話口の会長は、「掲載を希望しない子がいるので差し控える」との回答。
この報告を受け、この時留守にしていた別の編集部の者が「もしかすると、うまく伝わらなかったのでは」と再度電話をかけた。が、やはり返ってきたのは同じ答えだった。
そもそもこの大会は、市内18小学校に参加を募り希望する5.6年生が出場。その際の申込用紙の中に、広報で名前が掲載されることに承諾するかしないかを問うチェック項目がある。藤原会長の返答は「入賞者の中に掲載を希望しない子どもが入っている」といった理由から「今回の結果は知らせない」といったものだった。
多様性が重要だと叫ばれる昨今において、承諾するもしないも自由な選択。このことを勝手にネガティブなことと決めつけてしまうのはいかがなものか。本紙へ寄せられた多くの声を伝えるとともに、その判断は「(掲載を希望し)楽しみにしている保護者や地域の人、頑張った子どもたちの気持ちを無視することにならないか」と再度訴えた。これに対して「問い合わせがあれば個別に対応する」と会長。
短い練習期間ながらも挑戦し、子どもたちがつかみ取ったであろう努力の結晶、受けるはずだった祝福の機会を奪うことになるのではと、なおも食い下がった。しかし答えは変わらず、それどころか次第にその声は、主催側がそのように判断しているのに外部にとやかく言われる筋合いはないのではないかといった高圧的なものへと変わっていった。
【子ども置き去り市議にコロリ】
国は、子どもたちの自己肯定感の低さを懸念している。またこれらを向上させるのに欠かせないのが「自己有用感」だ。自己を評価する自己肯定感に対し、自己有用感は、ほかの誰か、他者の役に立っていると思う感覚のことを指す。喜ぶ家族や地域の人の笑顔こそ、自己有用感を育む絶好の機会だといえるのではないのだろうか。
ちょうど同じころ、市民の声を受けたという鴨田秋津市議からも同じような連絡が入った。「なぜ新聞に掲載しないのか」といった問いに事の経緯とともに知らされていない故だと伝えた。このあと鴨田市議が問い合わせたスポーツ振興課は事情を把握しておらず、次に教育委員会へと連絡が回ったという。そしてこのあと、事態は急変する。
週末にも関わらずその翌日の午前には、同連盟の会長を含めた役員3人(同連盟副会長▽理事)で再び検討したといい、前日に公表しないと強く言い放ったはずの決定事項が180度姿を変えた。
それについて会長の説明は「昨日は判断を誤った。そうした(楽しみにしている)声が多くあるとのことなので、やっぱり掲載してもらえれば」といったものだった。
4年前には市内小学校のひとつが某陸上大会へのエントリーをし忘れ、その学校の児童が参加できない事態が起こった。参加予定だった対象児童にプリント配布されただけで幕引きが図られたこの時、読者からの声を受けた本紙がこれを問い合わせた後、急遽記者会見が開かれた。
誰しも、頭を下げる教育者の姿が見たいわけでも、ありきたりな謝罪文書が読みたいわけでもない。
子どもたちが地域に見守られるなかで自己有用感を高め、自己肯定感を育み、真に、「ふるさと舞鶴を愛し 夢に向かって将来を切り拓く子ども」となることを願ってやまない。
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