花と共に心豊かに
溝尻の谷田さん・未経験から始めたバラ栽培
50種60本 色とりどりの花園
花愛でる人の憩いの場に
投稿日時:2022年05月27日(金)
病気にかかりやすいなどの理由で、初心者には敷居が高いと言われるバラの栽培。市内でも愛好家が育てるバラを目にすることもあるが、溝尻にひと際目を引くバラ園がある。全くの未経験から始めて、市内でも有数の規模に育て上げた男性を取材した。
溝尻でバラ園「POCKET PARK(ポケットパーク)236」を管理するのは、工務店を経営する谷田恵一さん(57)。2011年の栽培開始から、今年で12年目となる開花シーズンを迎えた。
傾倒するきっかけとなったのは、会社の事務所にあったミニバラの鉢植え。花の落ちた鉢植えがやがて枯れ、廃棄への道をたどることが繰り返しあったことから、「世話をしたらもう一度咲かないだろうか」と考えたことが始まりとなった。
元は300円ほどで手に入れた鉢植え。その都度、新しいものを買った方が手間はかからない。しかし、捨てるのはしのびなく、インターネットで知識を仕入れて世話をする日々が続いた。するとその年の秋、ミニバラは再び花を咲かせた。
「それでスイッチが入りました」と振り返る谷田さんは、会社の駐車場の一角で本格的なバラ栽培に着手。最初の頃は、無知ゆえに右往左往するばかりだった。ある時は、先達に一向に咲かないことを相談すると、「それは一季咲きだからまだ咲かないよ」と言われるほど、何も知らなかった。
しかし、人の話に耳を傾け自分なりに試していく中で、次第にうまくいくようになっていった。はじめて育てた品種は、「サマースノー」。初夏に雪のような白い花をつけることから名づけられたそのバラは、今では背丈を大きく超える威容を誇り、白滝のようにも見える豊かな花を咲かせるようになった。
長年に渡って、バラと共に過ごす日々。毎朝夜明け頃に目覚めて、出勤前の1時間半ほどを作業に充てるという谷田さんは、「植物は手をかけてやった分だけ 応えてくれる」と話し、「どんなに面倒な作業でも、苦にならない」と笑顔を見せた。
【実現したポケットパーク】
バラ園の名前の由来は、かつて米国の市民団体が取り組んだ活動から取っている。荒れた空き地などを活用して憩いの場とする考え方に、まちづくり活動へ身を投じた青年時代に共感を覚えた。
次第に華やかさを増すバラ園は近所の人の楽しみとなり、まさに地元のポケットパークへと変化を遂げた。道行く人々から「毎年楽しみです」と声をかけられるたび、強い使命感を覚えるようになっていった谷田さん。だが一方で、身体は悲鳴を上げ始めていた。
20代の頃から椎間板ヘルニアに苦しんできた谷田さんにとって、丹念なバラの世話は文字通り身を削る作業とも言えた。常に痛みが離れず、しっかりと眠れないほど症状の重い日もあるという中、1年前に2度目の手術をすることに。しばらくの間は、満足な世話も出来なかった。そんな日々を経て、やはりバラには大きな影響が出た。病気もまん延し、これまでで最高の出来だった2019年につけた花数の半分ほどしか、今年は咲いていないのだという。
しかし、そんな現状に接し谷田さんは、「今は人と一緒で、長い付き合いをしていこうという気持ち。良い時もあれば悪い時もある。うまくいかない時も一喜一憂することなく、自分の距離感でバラと付き合っていくという余裕が出てきました」と話し「これからも、この空間が人々の憩いの場所になれば嬉しいし、自分もバラと共に心豊かな日々を送っていきたい」と力を込めた。
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