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「魚のまち」さらなる高みへ<br>新規事業展開に活路を<br>事業承継で新陳代謝を活発に<br>後継者問題解消は地方再生のカギ

「魚のまち」さらなる高みへ
新規事業展開に活路を
事業承継で新陳代謝を活発に
後継者問題解消は地方再生のカギ

投稿日時:2022年03月01日(火)

 中小企業庁が2019年にまとめた「中小企業白書2019年度版」によると、後継者がないことから廃業を余儀なくされる中小企業が激増する「大廃業時代」が間もなく到来すると危惧されている。こうした時代の趨勢は、長らく「魚のまち」として歩んできた当地の漁業関係者にも当てはまり、目を背けてはいられない段階に入りつつある。

 府農林水産部が2013年に実施した調査によると、舞鶴市内の漁業経営体236のうち、「後継者がある」としたのはわずか29で、後継者がない割合は実に88%に上った。この結果は、当地の地場産業である漁業・水産加工業の衰退が危惧される状況を示し、大手以外の中小加工業者の減少がこのまま続いていくと、競りでの価格競争も無くなり漁師の体力を奪っていくことに繋がる。
 このような状況に陥っていることの原因は、食生活の変化による魚食機会の減少はもとより、コロナ禍による外食需要の激減にもあり、当地の漁業はまさに「待ったなし」の段階に入っていると言える。
 そんな中、数少ない新たな担い手が立ち上がった。創業72年を迎える水産加工業、「嶋一水産」後継者の嶋田篤人さん(37)だ。
 「このままでは業界の未来がない」と嶋田さんは憂い、「当地の地場産業である漁業・水産加工業の維持継続・ 発展に向け、能動的に『京都舞鶴港産の魚』を広く発信していくことが課題であると考え、新たな可能性を模索したい」と新たな事業展開に乗り出した。
【まちの未来を思って】
 嶋田さんの勤務する「嶋一水産」は、創業当時から長く主力商品である煮干しを中心に事業を営んできた。嶋田さんが入社した10数年前でも、煮干しは需給が安定し売上の約7割を占めていたという。
 しかし近年、漁業者を取り巻く環境は悪化の一途をたどっている。府内の漁業生産額は長期的に漸減し、煮干しの原材料であるカタクチイワシも、生産に適したものの水揚げ量が減少していることに加え、年々、多獲性魚を中心に魚価が低減している。そうしたことから、漁獲量と市場単価により収益が大きく左右される水産加工業では、通期の安定した収益確保が難しい状況が続いているのだという。
 そこで嶋田さんが手がけることにしたのは、「ホームページを活用した消費者への直接販売」だ。これまで手掛けたことのない小売りの開始はもとより、「京都府舞鶴産の魚をPRし、少しでも若い世代に魚食が好まれるきっかけを作りたい」と、2年近くの準備期間を経て自社のWEBサイト構築を完了した。また、ギフト商品の開発を見すえて、高級感のある箱を完成させるなど着々と地歩を固めている。
 嶋田さんは「自分が生まれ育った『魚のまち』の魅力を高め、水産加工業の発展につなげていきたい」と力を込めた。
 事業承継は、ただ単にバトンがつなげられたら良いというものではない。嶋田さんのように、新たな考え方と実行力で業界に新風が巻き起こることこそ、地方都市の再生には大切なピースとなっている。ひとつの新陳代謝が、次の前向きな変化を生む。そんなまちの明るい未来を期待したい。

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