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交流をきっかけに<br>NPO団体が親子のパン教室を開催<br>人との繋がりが人生を照らす明るい光に

交流をきっかけに
NPO団体が親子のパン教室を開催
人との繋がりが人生を照らす明るい光に

投稿日時:2021年12月03日(金)

 情報通信技術の急速な発達は、私たちの社会を劇的に変えた。今では、距離の制約を受けず様々な人と気軽に交流することが容易になった。しかしその一方で、孤立を深める人も存在する。そうした状況の中、「こんな時代だからこそ、より人とのつながりを活発に」と奮闘する人たちがいる。

 行永東町のパン販売「ブーランジェリーモンクール」でこのほど、イベント「お父さんとパン教室あそび」が開催された。
 イベントの対象者は、聾学校舞鶴分校小学部に通う児童とその家族。参加者はパン作りに取り組んだほか、聴覚に障害のある娘を持つ店主の橋本剛さん(45)が、自身の経験談を話す時間も設けられた。
 イベントを企画したのは、8月に設立されたNPO法人「まいづる遊BixS(アソビックス)=児島信行代表=」。同団体は、「いっぱい遊んでみんなで笑おう!」を合言葉に、まちづくり活動に取り組んでいる。
 市は「あそびあむ」を拠点として子育て支援に力を入れているが、施設の利用が難しい人などの存在が課題となっていた。そうした点にも着目し、「あそびを通した交流」の推進を目指す同団体。今回の事業は、その第一弾としての開催となった。
 当日は、大人も合わせて10人が参加。手話も交えながら、プログラムが進行した。
 講師を務めた橋本さんは、妻の恭子さん(46)とともに2017年に店を開業。高校を卒業後、ずっとパン製造に携わってきた橋本さんは、「いずれ、ここが子どもの居場所になれば」との思いで独立開業に踏み切った。今はもう21歳になる次女の茉依さんは、幼児期の定期健診で聴覚障害が発覚。当時を「暗闇に入った気分だった」と振り返りながらも、様々な難題を乗り越えて日々を過ごしてきた。
 橋本さんは「自分たちも先輩たちに手助けしてもらって今がある。パン教室はひとつのきっかけ。子ども達が何かに目覚める手助けを出来たら、こんなにうれしいことはない」と笑顔を見せた。

【背中押したひとの言葉】
 この日のイベントを裏方として手伝った桝田清志さん(42)も、2歳になる難聴の娘を持つ父親だ。以前から児島代表と知り合いだったという桝田さんだが、「まなびあむ」で偶然の再会を果たすまで関係は疎遠になっていたという。
 その原因は「娘の難聴だった」と振り返る桝田さん。生まれてすぐに発覚した難聴へのショックが大きく、ふさぎ込んだ。「職場の人や知人に知られて、気の毒だと思われたりしたくなかった」と振り返る。ジェット機の轟音が聞こえないほどの難聴で、手術も重ねた。
 そんな日々の中で、耳にした言葉で意識が変わった。「親が明るいと、子どもも同じように明るい」
 児島さんらとの交流も通じて、次第に明るさを取り戻した桝田さんは、「今は前を向くことができるようになった」と話し、同じような思いで悩む保護者たちの助けになればとの思いで活動に参加しているという。 「得意なことはさせてみないと分からない。親の仕事はきっかけを与えることだと実感している」と桝田さん。充実感の漂うその笑顔に、「あそびを通した交流」の芽が、いずれ大きな花をつけると確信した。

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