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舞鶴から支援の輪を~舞鶴高専教員らフェイスシールド製作

舞鶴から支援の輪を~舞鶴高専教員らフェイスシールド製作

投稿日時:2020年04月24日(金)

 新型コロナウイルスの感染拡大に収束の気配が見えない日々。医療の最前線では逼迫した状態が続き、防護服などの物資不足に関する報道も頻出している。そんな中、現状に危機感を抱いた舞鶴高専教員らが立ち上がり、支援の輪を広げようとしている。本紙は、支援に向けて人知れず活動を続ける教員有志らを取材した。

 「雨がっぱを提供してください」と14日、大阪府の吉村洋文知事と大阪市の松井一郎市長が異例の呼びかけをした。治療現場で不足している防護服の代替品として活用するためだ。舞鶴高専に赴任してまだ間もない電子制御工学科・藤司純一助教(28)は「もの凄く衝撃を受けました」とこの時の報道を振り返った。「何か自分たちにもできることはないか」と思いを巡らせた結果、藤司さんは「防護服が不足しているのなら、フェイスシールドも不足しているのではないか」との考えに至った。感染症患者と接する際に装着するフェイスシールドは、顔面部への飛沫や接触によるウイルス感染を防ぐためには必要不可欠だ。藤司さんは、すぐにベテランの芦澤恵太教授(42)に相談を持ちかけた。3Dプリンタを所有する複数の教員が、若手教員の熱意に賛同し、名乗りをあげた。同校に複数台ある3Dプリンタのうち、製作可能なものは7台。フェイスシールドのフレーム部分を製作するには20センチ角の作業ステージが必要で、それより小さいものでは製作に適さないからだという。「その時は試しに作ってみただけだったんです」と藤司さんは、試作品を手掛けた時のことを振り返る。まだ今ほどは危機が伝えられていなかった3月29日、公開されていた海外のデータを翻訳するなど友人の協力を得て実現したものだった。しかし、状況は変わった。一刻を争う危機に、使命感が燃え上がった。

【思いは伝播し 大きな力に】

 報道を受けた翌15日には、参加する教員それぞれが試作にとりかかった。データがあるとは言え、作製までの道のりは容易ではない。材料となるPLA樹脂や機材によって仕上りが異なるため、個別に調整が必要になる。この初期調整にもまた時間がかかった。さらに、作製開始から一つのフレームが完成するには、およそ3時間を要した。もう少し細いタイプのフレームなら時間短縮も可能だったが看護師の助言も受け、保護機能の面からもこのサイズにこだわった。通常業務もあるため、作業場所を離れては経過確認に戻ることの繰り返し。完成品を取り上げては次の作製にかかり、それぞれがわき目もふらず動きまわった。当面の目標は、40個に定めた。何より早く現場に届けたいとの思いが強かった。医療現場のひっ迫が続く中、「工業系には工業系なりにできることがある」との思いが原動力となっていた。一方、教員ら自身がそれぞれストックしていた材料を寄付する形で作製していることに気づいた芦澤教授は、個別に材料費の負担がなくなるよう、上層部にかけあった。プリンタ所有の教員たちがフレーム作りに奮闘する中、総務課職員たちはスポンジやゴム部分などの調達に走った。透明度を求めて悩んだのは、顔面を覆う部分だった。そんな中、校内に少し在庫として残っていたOHPシートを見つけ出した。以前はよくスライドに活用されていたシートだが、パワーポイントの普及により出番を失っていた。懐かしいシートのお出ましにより出入業者である志摩至誠堂(志摩正蔵社長)も、今回の取り組みを知ることとなった。趣旨に賛同した同社は、在庫を探し出し、再び同校を訪れた。「ぜひ使ってほしい」と届けられたのはおよそ1000枚近くのOHPシートだった。目標個数に到達したのは20日。翌21日の午前には芦澤教授の手配のもと、フレーム40個、替フィルム含80枚を大阪府へ向けて送った。芦澤教授は「『教育を止めない』の合言葉のもと、自分たちにできることは本当に微力。しかし、各大学工学部や高専などでは稼動していない休眠プリンタもあると思う。工業系が医療現場などを支える一助となれば」と願った。一人の若手教員からはじまった支援の点がつながり小さな輪を作り、校外へと飛び出した。この輪が、医療現場を、そしてわが国を支える輪になることを期待したい。

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