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喜多地区パーム油発電 新たな局面へ

喜多地区パーム油発電 新たな局面へ

投稿日時:2020年04月28日(火)

 喜多地区の府有地で計画されているパーム油を使ったバイオマス発電所の出資会社が22日、関係各所に送った書面で事業への出資から撤退する意思を表明した。この報を受け24日、多々見良三舞鶴市長は、引き続き事業を推進していく方針を示した。

 計画は喜多と舞鶴港喜多ふ頭の府有地計約3.8ヘクタールに、バイオマス発電所を建設するというもの。運営する事業主体は「舞鶴グリーンイニシアティブス合同会社(MGI)」。同社は撤退を表明したAmp社が出資し設立された。発電所の最大出力は66メガワットで、パーム油によるバイオ発電所で国内最大規模となる。年間8600時間の稼働で生まれた電力は関電に売電するといい、一般家庭約12万世帯の電力に相当する規模になる。事業計画はAmp社の撤退により一歩後退した形だが、市は「(発電所の建屋の建設、運営、保守を担う)日立造船が新たな出資会社を募ることになるだろう」とし、地元住民の理解を求めながら事業を引き続き推進する意向を示した。同計画についてはこれまで、舞鶴西地区の環境を考える会(森本隆代表)がインターネットを中心に集めた事業中止を求める署名を経産省と環境省に提出するなど、反対活動が活発に継続している。10日に「建設反対住民アンケート調査結果」を市長に提出し、「アンケート結果が示す通り、住民のほぼ全員が反対だ」と訴えた喜多地区自治会(193戸)の環境保全委員長である大西寛治さん(65)は、「(Amp社の撤退は)3社目となるが、このことは計画自体に無理があることを如実に示している」と話した。

【主張の溝を埋める 見通し立たず】

 「(Amp社の撤退の報を受け)市は諦めてくれるのではないかと期待しただけに、推進の表明は残念極まりない」と大西さんは無念さをにじませた。パーム油の安定的な調達には様々なリスクが伴うが、今回のコロナ禍により新たなリスクが顕在化したとも言える。同社の撤退は、そんな状況を受けたものであると分析する大西さんは、「このパーム油問題は、今の市政を象徴している。忖度が横行し、事実が市長の耳に届いていないのではないかとさえ感じる」としながらも、「ただの田舎のおじいさんたちが反対の旗を振っているだけではない。多くの人々が賛同してくれて、連帯が大きく広がったことがAmp社を撤退に追い込んだ」とこれまでの活動を評価した。また、舞鶴西地区の環境を考える会の森本代表(47)は、「市長の話は想定内で、仲間達ともこのような結果になる事は予想していた」と話し、「すでに対応策は講じているので粛々と計画を進める。市は市長自身に、市民の声を聞く姿勢がそもそもないので交渉相手に値しない。今後の反対運動は日立造船に対する抗議活動を主に進める。」と話した。また、一部報道での市長の発言について森本代表は、「今回の市長の言葉には大義が無く個人的な感情での発言だと感じている。既に勝利は私たちの手にあり決定が早いか遅いかだけの違いだ」と改めて対決姿勢を強めた。コロナ禍で当地の疲弊が続く中、パーム油発電所問題は新たな局面に入った。両者の溝が埋まる気配は見えず、今後も市の難しい舵取りは続きそうだ。

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