地区の伝統を後世に
多門院長生会 「稲の虫送り」準備に汗
子らの笑顔が作業の励みに
投稿日時:2021年07月02日(金)
歯止めのきかない少子高齢化や生活スタイルの変化などによって、私たちのくらしを取り巻く環境は、近年大きく様変わりしている。古くからその地に伝わる伝統行事もまた、そんな風に形を変えたり失われつつあるものの一つといえるだろう。一度は途絶えたが「地区の伝統を後世に」その強い思いで住民らが復活させた多門院地区「稲の虫送り」が、今年ももうすぐ行われる――。
今のように薬品による防除手段がない江戸時代に広まったと言われている伝統行事で、住民らは松明を持ち農道を歩き、稲の害虫駆除や豊作を祈願する。
開催日が7月3日と迫るなか準備に勤しむのは、地区の老人会「多門院長生会」(新谷一幸会長)の会員たち。
この日は朝から10人が参加し、行事で使用する大松明づくりに精を出した。切り揃えた長い竹に、いくつかの割竹をワラ縄でくくりつけ、火を灯す部分に枯れた杉の葉や白菜の穂先などを入れていく。
手際よくこなす会員たちだったが、ワラ縄で束ねる際の「男結び」に苦戦する姿も。強度が強く解けにくいのが特徴の男結びは、農作業には欠かせない結び方。「使わないと忘れてしまう」「自分で出来ても教えるとなると難しい」と声をかけたり教え合うなどしてにぎやかに作業を進めていた。
こうして完成したのは、長さ2.5~3㍍、重さ約10㌔の大人用松明30本。
前日は地区の除草作業に汗を流したという会員たち。「この作業が終わったらまた今日も草刈り。もうあかんわ。くたくたや」などと口々に言いながらも、「子どもたちが楽しみにしてくれるし、笑顔を見たら全て報われる」と笑顔を見せた。
2日には、今年切り出した青竹を使用し子ども用の松明をつくる。
新谷会長は「喜ぶ子どもたちの姿が見られるのは嬉しい。地域を大切にしながら、自分たちが体験したような伝統行事を次世代につないでいきたい」と話した。
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