顎ひげ 伊達じゃないぜ ヒゲダイ 【舞鶴・若狭水中散歩】
投稿日時:2022年02月14日(月)
ヒゲダイは、その名の通りひげの生えた魚である。まったくの内輪ネタで恐縮だが、最近よく潜水調査に同行してくれている当実験所の澤田さんにも、こんな顎ひげがある。
睫毛の生えた魚は珍しいが、ひげの生えた魚ならいろいろいる。身近な淡水魚ではナマズにコイにドジョウ、海の魚ではゴンズイにヒメジにマダラといったところか。ヒゲダイのそれはやや控え目で、下顎と下唇に短い突起状のひげが密生する。一般に、魚のひげには感覚器が密集しており、微量の化学物質を検知できる。したがって上記のいずれの魚のひげも、砂中に隠れた餌を探したり、濁った水中で獲物を捕える際などに役立っており、伊達ではない。
ひげといえば、筆者も大学院の途中からポスドク研究員の頃に生やしていたことがある。身内からは「口カビ」、友人からは「香港のポン引き」と揶揄された末、大学に着任して初出勤の日の朝にそり落とした。伊達でもなく、かつまったく役に立たないヒゲであった。
ヒゲダイは、若狭湾ではやや稀な種類である。水中で見たのは筆者も今回が初めてであり、これ以外に由良川の河口で網を曵いて調査していたときに1回、またスーパーの鮮魚コーナーで1回お目にかかったくらいだ。食用魚としての認知度も低いであろう。
さて、そのヒゲダイが、2匹並んでいる。体長からすると成熟にはほど遠い幼魚であり、つがいというわけではないだろう。また、海の魚はたいてい、生まれてから1ヶ月程度は、水中を漂う生活を送るため、その間に仲間を見つけるのは極めて難しい。それではこのヒゲダイ、どうやって互いに相手を見つけたのか。ひょっとすると、伊達ではないこの顎ひげが、仲間を見つける際にも活躍しているのかもしれない。
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