再会 さすらいの漂流魚 アミモンガラ【舞鶴・若狭水中散歩】
投稿日時:2022年02月14日(月)
12月にしては暖かく海も穏やかな日、いつものように潜水していて、ふと水面を見上げると、見慣れない魚の姿が視界に入った。近づいて写真を撮るうちに名前を思い出した。アミモンガラである。
本種はモンガラカワハギ科の魚で、全世界の熱帯から温帯の沖合いに生息する。漂流物に寄りつく性質があり、写真の個体は他の1匹とともに、係留されたボートの下にいた。
アミモンガラを目にするのは、14年前の12月以来だ。その時は、低水温のために死んだと思われる個体が実験所の前の浜に打ち上げられていた。生きた本種を水中で観察するのは、今回が初めてである。
外洋を漂流する者にとってこの魚は、馴染み深い魚のようだ。『大西洋漂流76日間』というノンフィクション作品中で、カタハダモンガラとしてたびたび登場する魚は、本種を指すとみてほぼ間違いない。ヨットで遭難後、救命いかだで漂流を開始して13日目、初めての食事がこの魚だったという著者のキャラハン氏によれば、皮はとてつもなく堅く、身も堅くて苦く、靴を食べているようだが、内臓は美味との評価だ。
南の海のまんなかに住むはずの魚が師走の若狭湾沿岸にいるのは、対馬暖流に乗って流されてきたためであろう。上記のキャラハン氏の魚バージョンな状況である。本来、鮮やかな藍色をしているが、低水温のため心無しか青白い。また、動作も鈍く、手づかみで捕えることができた。
この写真を見て、「カワハギに似た顔やし、案外旨いんちゃう?」との印象を持たれる方もいらっしゃると思う。特に、ウマヅラハギによく似ている。かつて筆者がハワイに住んでいた頃、無性にカワハギが食べたくなり、当地に住むモンガラカワハギ科の魚を捕えて煮付けで食べたことがある。もう一度食べたい、と思う味ではなかった。南の海は素敵だが、若狭湾の魚の方が確実に旨い。
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