トゲモミジガイ- フグと同じ毒持ってます。 【舞鶴・若狭水中散歩】
投稿日時:2022年02月14日(月)
トゲモミジガイは、若狭湾の砂地の海底でごく普通に見られるヒトデの一種である。遠目には綺麗な星形のヒトデだが、近くで見ると棘が上下に向かって生えており、踏んだら痛そうである(写真左)。これと良く似たモミジガイという種類のヒトデには、下向きの棘しか生えておらず、幾分フレンドリーな外見と言える。
ヒトデといえば、海底でじっとしているイメージがあるかもしれないが、潜水中に出会うトゲモミジガイは意外に早足で、海底をすべるように動く。地面と接する側に細かい管状の足(管足と呼ぶ)が生えていて、これらを交互に動かすことにより、高速すり足が可能となっている。
鋭い棘と高速すり足だけではまだ不安なようで、彼らは毒を蓄えることにより身を守る。それも、フグ毒と同じ、テテロドトキシンである。したがって、読者の皆さんがもし海辺でサバイバル生活を強いられた場合も、このヒトデは食事のメニューからはずした方が良いであろう。
そんな完全防備に見えるトゲモミジガイにも、天敵はいる。カワハギはおちょぼ口でこのヒトデにかみついてはひっくり返し、弱点である口を攻める(写真右)。ヒトデそのものを食べるのか、胃の中の貝を狙っているのかは不明だが、棘にも毒にもくじけないカワハギのタフさには、真似したくはないけれど見習うべきものがある。
由良川の河口、神崎海岸の沖あたりで学生実習の一環として網を曵くと、このヒトデがどっさり獲れることがある。真面目な学生さんなら、「一体何を食べてこんなに増え、それが誰の役に立っているのだろうか」と考え込んでしまうところだ。ヒトデは貝を食べるし、他の生物の死骸も食べる。そして、こんな彼らにも天敵はいる。何の役に立つのかさっぱりわからないものもひっくるめて、調べ、理解し、守ることが大切なのだと思う。
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