クロメ- 藻場づくりに一役 【舞鶴・若狭水中散歩】
投稿日時:2022年02月14日(月)
クロメはコンブ科の海藻である。コンブ科には、北海道の岩場に繁茂しダシ昆布の材料となるマコンブ、太平洋側の磯で優占するカジメなどがあり、いずれも多年生で海中林を形成する。クロメは、葉の表面にしわが多く、乾燥すると色の黒いのが特徴である。食用になる。今回の撮影場所は、舞鶴市野原漁港の北にあるビンゴウロという岩場で、あたりは以前から海藻の生えにくい磯焼け地帯である。海藻の生育不良は水中の鉄分不足に起因するとの説がある。そこで2年前に、京都大学・京都府および新日鉄の共同により、鉄を含む肥料を沈め、以後追跡調査を行っている。海藻や水質の調査を定期的に行うのは、渋谷正信氏の率いる潜水調査会社で、筆者はそれに時折同行している。渋谷さんによれば、海藻が生えれば何でも良いわけではなく、たとえばワカメよりもクロメの方が望ましい。ワカメは春先にのみ成長し、夏には枯れる。ところがクロメは3~4年生きるので、これが育てば年間を通しての藻場となる。人間が食すにはワカメの方が旨いが、稚魚の隠れ家やアワビやサザエの餌としては、年中供給できるクロメの方が有用なのだ。さて、ビンゴウロの岩場にクロメなどの海藻は生えてはきたが、育つ端から何者かに食われている。海藻を食べる魚として、アイゴやメジナなどが知られるが、当海域でこれらの魚は見あたらない。また、同じく海藻を食すウニも少ない。やたらと目につくのがアメフラシで、海藻をよじ登っては捕食していた。ではアメフラシの天敵は何だろうか。良く繁茂した藻場にいてビンゴウロにいない魚として、クロダイが挙げられる。クロダイはナマコの天敵とされるものの、アメフラシを食うかどうかは不明だ。いずれにせよ、鉄から海藻、アメフラシ、そして魚へと、見えない鎖をたぐる必要があろう、などと、クロメ色に日焼けしてぼうっとした頭で考えるのである。
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