逆境で また強く コロナ禍で学んだ新たな武器
投稿日時:2021年02月05日(金)
世相が新型コロナ一色となって一年。私たちの社会は大きな変容を遂げた。
そんな中、業種によっては大きな打撃を受けた商環境だが、とりわけ観光業界は深刻な業績の落ち込みを余儀なくされた。「前を向く気力が残っていない」といった声も聞こえてくる一方で、前代未聞の逆境に立ち向かう人がいる。
御年91歳。半世紀以上に渡って観光ガイドに携わってきたジョー岡田こと、岡田逸雄さんが新たな挑戦に乗り出している。
* * * *
主に京都市内で、外国人観光客相手にツアーガイドを行っていた岡田さん。2014年には「京都観光大使」を委嘱されるなど、長年に渡って活躍してきた。
しかしこのコロナ禍で、それまで年間100回は行っていたツアーはほぼゼロに。収入は激減することになった。バブル崩壊と後に続く急激な円高で撤退せざるを得なかった「サムライショー」を引き合いに出し、「今回はその時以上の落ち込み」と岡田さんは話す。
それでも肩を落とし続けるわけにはいかないと、岡田さんは自宅近くの空き地の草刈り仕事を買ってでるなど、体を整えながら虎視眈々とコロナ後を見すえて動き始めた。
そんな中で始まった取り組みが、オンライン講座での後進ガイドの育成だ。観光ガイド団体が、ビデオ会議システム「ZOOM(ズーム)を用いて始めた講座の講師としてパソコンに向かう日々が始まった。
知人に教えを請うた岡田さんは、「90の手習いを始めた」と笑顔を見せる。今では、パソコンに向かって自然に講座を進められるようになった。
健康の秘訣だというウィスキーを年間100本飲み干すという岡田さんは、「この楽しみを続けるためにも頑張る」と悪戯っぽく笑った。
【愚直にされど、しなやかに】
岡田さんが生れたのは1929年。戦前戦後の大阪市内で、たくましく成長した。
中学を出てからは港湾で荷役の仕事に。その後は時勢に合わせて職を転々とする中で、天職に出会った。
きっかけは、外国人客と案内役の日本人ガイドを乗せる運転手の仕事に就いたこと。
「俺の進む道はこれだと目覚めた」と岡田さんは振り返る。以来、独学で猛勉強に励み、英語を習得。それとともに難関の通訳案内士に合格。伏見桃山城(京都市)を拠点に、14年間で延べ13万人もの集客を記録したサムライショーを主宰するなど、観光業の第一線で活躍し続けてきた。
ガイドした客から「サムライはどこにいるのか」と聞かれて、「そういえばどこにもいない」と駆け出しガイドの頃に思ったことがきっかけで始めたサムライショー。最初は居合の先生に頼んでいたが途中で投げ出され、未経験のまま刀を握った。
来る日も来る日も、鴨川の河川敷で石を投げてバットで打つ練習を繰り返し、「りんご斬り」を習得。それからは、岡田さんの「キラーコンテンツ」となった。
卒寿を超えたこれまでの人生で、何度も大きな試練を乗り越えてきた岡田さんは、「真剣は折れないんだ」と話した。硬い鉄と柔らかい鉄、硬度の異なる鉄を使っているからだという。
時に愚直に、時に柔軟に。時代に合わせて生きてきた人生が、その言葉に重みを持たせていた。
岡田さんは、「コロナになんて負けない。2025年の大阪万博は、ガイド人生の集大成にしたい」と力を込めた。
『お知らせ』
ジョー岡田さんがNHKの番組「ロコだけが知っている」に出演。番組MCを務めるのはサンドウィッチマンと桑子真帆アナウンサー。2021年3月13日(土)午後6時30分放送予定。
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