最後の学園祭~『感謝』の集大成を有志らが企画
投稿日時:2021年04月20日(火)
多世代交流施設「まなびあむ」が完成に近づき、廃止へ秒読み段階となってきた文庫山学園で、利用者有志が「最後の学園祭」を企画している。「これまでの感謝を込めて企画している」と話す人たちを取材した。
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文庫山学園がオープンしたのは1980年。老人福祉向上の必要性が叫ばれ出した当時、近隣地域で類を見ないほどの充実した設備を有する施設が誕生した。4億6300万円を要した整備費には、市出身の実業家・河守浩さんから巨額の寄付金や、老人クラブ員と多くの市民からの募金も充てられた。
鉄筋コンクリート平屋建て1986平方メートルの本館には99畳の大広間などを備え、バドミントンが出来るミニ体育館をはじめ、図書室や浴室、調理室、茶室、会議室もあり、入浴も含めて、60歳以上の高齢者に無料で開放してきた。
現在、同学園には、絵画教室やカラオケ、踊り、健康教室など22のサークルがあり、開館からこれまでの間に延べ212万人もの市民が利用。生き生きと人生を送る場所として大切にされてきた。
利用者の有志らは、移転先の施設ではこれまで無料だった使用料金が有料になるなど、「老人福祉を重視したものではない」と反発。署名活動を展開するなど移転に反対を続けてきたが、思いは届かなかった。
署名活動に中心的な役割を果たしてきたカラオケサークル所属の山口ムツ子さん(72)は、「存続を求め続けてきたが、日が経つにつれ(移転は)やむを得ないという気持ちになってきた。今は、『これまで遊ばせてもらってありがとう』という気持ちです」と笑顔を見せた。
【それぞれの人生と共に】
山口さんらが企画する「学園祭」は、5月6日に実施の予定。当日は、カラオケやダンス、詩吟、民謡など数多くのサークルが参加し思い思いの発表を繰り広げる。新型コロナウイルス感染症対策の配慮で、入場者数に制限を設けるほか、換気や手指消毒などを徹底する計画だ。60歳から始めたカラオケで持病の喘息を克服したという山口さんは「12年7か月という長い間、利用させてもらった。当日は、感謝の気持ちの集大成にしたい」と意気込む。
ダンスサークルで活動する岸田保子さん(76)は「夫が亡くなってから、がんになりどん底を味わう中、友達の勧めで通うようになった。ここは生きる希望であり、ここでの活動は生きがいです」と話した。
岸田さんと共に同サークルに所属する江上準子さん(73)は、「友だちに誘われて始めた社交ダンス歴は13年になる。綺麗なドレスを着られたりと、ダンスは生き生きとした日々を過ごすモチベーションになっている」と力強い。
様々な思いを受け止めて、それぞれの人生を彩ってきた文庫山学園。感謝の気持ちに包まれて、その最終章が幕を開けようとしている。
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