「クロ」の物語 世界へ~英語版紙芝居 東高生徒が提案し実現
投稿日時:2021年02月19日(金)
ユネスコ世界記憶遺産登録から5年。これまで史実を様々な角度から伝え、平和の願いを発信し続けてきた舞鶴引揚記念館が、東舞鶴高と連携し新たな取り組みに着手した。英語版引き揚げ紙芝居「シベリアからやってきたクロ」の作成だ。
9日には平野屋のスタジオバンガードで、同校生徒による録音作業が行われた。
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この紙芝居は、2016年に同校が制作し同館に寄贈。同年に開催された「ユネスコ記憶遺産登録1周年記念フォーラム」では、同校ESS部の生徒たちが英語で披露する一幕もあった。
実話に基づく物語の主人公は、「クロ」と名づけられた雌犬。シベリアの収容所で日本人の抑留者たちに可愛がられていた。
深夜に発生した火事を鳴いて知らせたりすることもあったクロ。抑留者たちは食料を分け与えるなどし、心の拠りどころとしていたが、帰国が決まった時に連れて帰ることを許されなかった。
1956年12月24日、シベリアからの最後の引揚船「興安丸」がナホトカ港を出港。港に取り残されたクロだったが、あきらめずに凍った海上を走り船へ。氷の割れ目から海へ落ちたクロは無事に引き上げられ、帰国者と共に舞鶴の地に降り立った。
この心温まる交流の物語を題材にして作られた紙芝居は、舞鶴引揚記念館でも公開されており、多くの人々の共感を集めている。
【英語で熱演 世界に発信】
英語版作成への取り組みは、昨年9月に始まった。英訳は同校教員と英語指導助手が担当。英語版の題名は「Kuro from Siberia」。国際文理コースの2年生10人が、朗読の練習を重ねた。
そして迎えた収録日、集まった生徒らは緊張感をにじませながらも、次第に物語にのめりこんでいった。
クロが海に飛び込んでいく物語最大の見せ場では、大きな声で感情を込めて熱演。悲鳴にも似た感情豊かなセリフ回しで、「GO BACK(戻れ)」と叫んだ。
クロの話は小学生の時に初めて聞いたという木谷茉奈さん(17)は、「イントネーションが難しいが、伝わりやすいようゆっくりと話すことを心がけた」と話し、「世界の人たちに発信する手伝いが出来てうれしい」と満足感を漂わせていた。
佐藤仁哉さん(17)は、「英語での感情の出し方が難しかった。争いや差別のない世界になってほしい」と話した。
英語版の紙芝居は、同記念館のユーチューブ公式チャンネルで3月中に公開を予定している。
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