-「吉原地区の地蔵盆・地蔵菩薩(じぞうぼさつ)の縁日」-【舞鶴の伝統文化】
投稿日時:2022年02月14日(月)
その昔、西舞鶴の天然の良港は「笛が浦」と呼ばれていました。その東側沿岸に位置した地区「吉原」は「笛が浦」を漁場(りょうば)として活動した漁村で、新鮮な海の幸を提供して田辺城下の食卓をうるおして来ました。 ギーギーと伝馬舟(てんません)の櫂(かい)を漕(こ)ぐ軋(きし)みの響きによって大漁を察する事ができ、往時の漁師たちが漁を競った漁師魂(たましい)は今も健在です。吉原地区は8月13日から15日まで、お盆と合わせて「地蔵菩薩の縁日」とした子供たちが主役の地蔵盆が行われます。昔は男の子だけの地蔵盆でしたが、少子化により、今は女の子も加わり、地域の役員さんや父母の手助けが欠かせなくなって来ました。この日は吉原地区の10個所で、地蔵菩薩(地蔵尊)を祀った厨子(ずし)を雛壇(ひなだん)に飾り提灯やお供え物で賑やかにお祀りします。地蔵菩薩には沢山のご利益(りやく)を授ける力があるとされています。全ての苦悩とさ迷い続ける魂を救い、最も弱い立場の人々を優先に救済する菩薩であると言われている事から、一般大衆には身近でどんな願い事でも頼めるお地蔵様として、人々は古くから絶大な信仰の対象にして来ました。また子供たちの守護神としても名高いのがお地蔵様です。14日は子供たちが「鉦(かね)」と大きな「数珠(じゅず)」を持って「オナマイさして下さーい」と1軒1軒廻ります。お家の了解が得られればその家の仏壇前で子供たちは直径2メートル程もある大数珠を持って座り輪になります。上級生の音頭取りが輪の内に入り、鉦を打ち「オナーマーイ ダンボ」とリードすると、子供たちは一斉に「オナマイダンボ」と唱和を繰り返しながら大数珠を左廻しに廻し続け、初盆の家では特に丁寧に唱えます。この唱え方も地区により色々とアレンジされて伝えられているようです。終るときは音頭取りが「オナマイおーしまい」とか「オナマイケンチャラボ」と言って鉦を叩いて終り、お供えをいただいて次の家へと廻ります。お盆は祖先の霊・新仏・無縁仏を供養(くよう)します。吉原地区では延享(えんきょう)3年(1746)の疫病大流行で多くの子供が亡くなりましたが、この地蔵盆ではその時の疫病で亡くなった子供たちの冥福を祈り、供養しているとの事です。「オナマイダンボ」とはどう言う意味なのか地元の方々に尋ねてみましたがわかりません。「昔から言い伝えられている事で、意味は知りません」と多くの方の言葉でした。いずれにしても、子供たちが地域との連帯感を深め1人では生きられない、仲良く助け合って行こうと言う心が、地蔵菩薩を介して唱える子供たちの棚経(たなぎょう)ではないでしょうか。(福)
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