オハグロベラ−雌から雄へ性転換
投稿日時:2022年02月14日(月)
オハグロベラは、金色の地に黒い斑紋の並ぶ、蒔絵のような柄の魚だ。名前の由来は、お歯黒、つまり昔、既婚の女性が歯を黒く染めたというそれになぞらえたのだろう。上記の色彩は成熟した雄であり、雌は地味な黄褐色をしている。
ベラ科の魚の多くは、成長するにつれて雌から雄へと性転換する。すなわち、雌として成熟し卵を産んだあと、生き残った雌は自然に体が雄へと作り変えられ、次の産卵期には雄として繁殖に参加する。性転換する前に死んでしまう個体も多いことから、雄は少数であり、多くの雌の卵を受精させることができる。
オハグロベラの雄では、背鰭の棘が長く伸びているのも特徴的である。千葉県館山の海をフィールドに魚類の繁殖行動を研究する須之部友基先生は、「本種の雄の棘が長く伸びるのは、これを基準に雌が雄を選ぶからではないか」と考えたそうだ。そこで、オハグロベラの雄の棘を切ってみて、処理をしていない雄と比較したところ、雌が雄を選ぶ程度に違いは生じなかったとのこと、以上は、当実験所の大学院生の尾形君が須之部研究室を訪ねた際に仕入れてきた話である。
これを聞いて思い出したのが、まことに個人的かつ瑣末ながら、自分の睫毛に関することだ。小学生の頃、自分には睫毛がほとんどないのを気にして、親にその理由を尋ねたところ、「赤ちゃんのときは長かったから,切ったらもっと長くなると思ったら、伸びてこなかったのよ」というのが母の説明だった。睫毛の短いことにより自分が異性に選ばれにくかったのかどうかは、比較実験がないのでわからない。
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