スジハゼの生態

スジハゼの生態

投稿日時:2016年8月5日

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 スジハゼは、舞鶴湾内で網を曵いて一番数が多く採集される魚だそうだ。もっとも、これを調べたのは、京大水産実験所でスジハゼの生態を研究していた松井彰子さんなので、本種の採集に適した網を使用したということはありそうだ。それにしても、年中沢山いる魚であることに間違いはなく、筆者の潜水目視調査でも、最も頻繁に見られる魚の一つである。
 大学院での研究テーマを選ぶ際、「エビと共生するハゼは舞鶴湾にいませんか」と松井さんに問われて、「それならスジハゼ」と筆者が答え、彼女の研究対象がこの魚になった。テッポウエビは海底に巣穴を掘り、地中から出てきた餌をスジハゼが頂く。敵が来たらハゼはエビに危険を知らせ、最後は自分も巣穴に逃げ込む。ハゼの撮影は容易だが、エビは警戒心が強く、両者をあわせて写真を撮るのは難しい。この共生関係は、東野圭吾の名作『白夜行』でも重要なメタファーとして用いられている。
 スジハゼと呼ばれる魚には、色彩や生息環境の異なる3種類が含まれていることが、以前から指摘されていた。2013年発行の図鑑では、河口を好むツマグロスジハゼ、湾奥のアマモ場に多いスジハゼ、そしてやや深い海域で見られるモヨウハゼの3種に分けられている。それぞれの分布や生態、遺伝子組成の違い等については、松井さんが博士論文の中で詳しく記載している。
 通常異なる場所に住むはずのこれら3種が、海上保安学校に近い牛渡鼻の沖のごく狭い範囲内では、同所的に見られる。その地点の環境を詳しく調べてみると、海底から地下水が湧出していたそうだ。天然の良好である舞鶴湾は、海の生き物にとっても、他に替えがたい住み場所を提供しているのかもしれない。
写真 2002年5月2日 舞鶴市長浜の水深4m付近で見られた体長4cmほどのスジハゼ。穴はテッポウエビが掘ったものだろうが、隠れて見えない。