最新の記事

  

確たる魅力づくりに注力を<br>コロナ後の観光振興・市内経済への波及効果<br>観光施策の費用対効果を検証する必要性も

確たる魅力づくりに注力を
コロナ後の観光振興・市内経済への波及効果
観光施策の費用対効果を検証する必要性も

投稿日時:2022年07月22日(金)

 多々見市政3期12年の最終盤。この間に大きく推進へと突き進んだ観光施策は、どのような果実をわが街にもたらしただろうか。一時はあいさつに立つたびに市長が口にした「交流人口300万人・経済人口10万人都市・舞鶴」のキャッチフレーズもコロナ禍を経てすっかり過去の遺物となってしまい、今や市は「ヅルいい!舞鶴」のキャッチコピーを前面に出し曖昧模糊としたブランディング戦略を展開している。
 そんな中、旗印を失いながらも進められる観光施策は、いよいよアフターコロナに向けて動き出しつつある。

 「交流人口300万人・経済人口10万人都市・舞鶴」は、市が平成27年度から本格的に取り組み始めた施策のキーワード。人口減少社会において人口増を単純に目指すのではなく、観光客などの消費額で換算した「経済人口」で人口増を目指そうというもので全国でも同様の考え方を採用する自治体が多く、言わば「流行りの政策」でもあった。
 当初に市が掲げた目標は、観光入込客数を主とした「交流人口」を5年間で100万人増やし、1人当たりの消費額を1000円上乗せし「地域消費額」を約倍増の150億円とすることで、定住人口に換算した場合に約1万7400人にするというもの。その結果、平成30年には経済人口が10万人を超えるという計画だった。
 令和2年初め頃までは、職員への年頭あいさつなどで事あるごとにこの話題に触れていた市長だが、コロナ禍が深刻になるにつれて交流人口という言葉を口にすることはなくなった。
 その間、実際の人口は減り続け、現在は78441 人(6月1日現在)となっており、平成30年の目標値で前提にした定住人口から6000人も減少。今や、交流人口300万人を達成しても、経済人口は10万人とならない計算となっている。

多くの観光客で賑わう ゴールデンウィークの赤れんがパーク

 【観光入込客数の算定根拠は】
 「そもそも観光入込客数のカウントがおかしいのではないか」と話すのは、以前に市内の某観光施設の担当をしていたという50代男性だ。観光入込客数の正確な算定は難しく、来館者にチケットを販売するような施設であれば正確な数字を割り出せるが、そうでない場合は「概ねの数字」でしかない。また、市内全体の観光入込客数は、複数ある施設の積算になるため、重複するデータがかなりの数あると考えて間違いない。コロナ禍前の数字では、観光入込客数が年間で約250万人あったとされているが、そもそもその数字は市民以外の人が毎日7千人近く訪れているということを意味し、あまりにも非現実的なことがわかる。確かに週末の赤れんがパークなど一部分で賑わいがあることは事実だが、数字あそびに終始すると本来あるべき振興策に狂いが生じるのではないかと危惧せざるを得ない。
 コロナ禍の始まりだした令和2年1月、仕事始めのあいさつの中で市長は「交流人口は平成23年の153万人から平成29年に283万人へ1.8倍と飛躍的に増加し、経済人口も平成29年に約9万8500人となり目標を少しずつ達成してきています」と成果を強調したが、その後は公の場でほとんどこの件について口にすることがなくなっていった。
 幸か不幸か、コロナ禍によって観光施策においては机上の成果のみを追い求める風潮は姿を消したとも言える。赤れんがパークも民間企業の運営となったことで、今後の新たな取り組みで真価が発揮されることを期待したい。

2000万人目の感謝状を手に笑顔を見せる3人

 【魅力を磨き更なる発展を】
 そうした中、京都府が8日、京都市を除く府域の令和3年度観光入込客数を発表した。
 それによると観光入込客数、観光消費額ともに前年度を上回ったとし、コロナ禍ながらも府民割などの効果が一定あったとの認識を示した。
 しかしながら舞鶴市では客数が79.4%、消費額が同78.9%と大きく前年を割り込む結果となり、市内の観光振興策は府域全体に比べて機能しなかったと言える。
 このように長引くコロナ禍で大きな影響を受けている「舞鶴港とれとれセンター」で14日、累計2000万人目の入館者に記念品が贈られるセレモニーがあった。
 節目の入館者として感謝状やぬいぐるみなどの記念品を受け取ったのは、それぞれ介護職に就く岡本峰與さん(箕面市・54)、田中里江さん(茨木市・53)、松田廣美さん(同・59)の3人。
 職場の仲間である3人は、全員が同センターを初めて訪問したという。当初は淡路島に行く計画だったが、天候の都合で舞鶴に変更。節目の客となったことについては、「まさか、と何かの冗談だと思った」「介護の施設で徳を積んでいるからご褒美」などとそれぞれ喜びを爆発させた。
 今年10月に開業26周年を迎える同センターの藤元達雄理事長(74)は、「コロナでずっと大変だったが、ようやく2000万人目を達成できて感慨深い」とし、「次は3000万人を目指してみんなが努力していかないといけない。多くの人に来ていただくにはここに魅力がないといけない。組合員一同、頑張って磨いていきたい」と決意を新たにしていた。
 これまで数字ばかりが独り歩きしていた感のある観光行政。しかし、大切なのは机上の数字では決してない。
 節目の客となった3人は取材中に「また、来たい」と何度も繰り返した。そんな風に感じてもらうための要素は何なのか、熟慮し試行錯誤するその先に観光振興の未来図を描きたい。

この記事をシェア!
Management BY
舞鶴市民新聞
当サイトは舞鶴市民新聞社が運営しています
ページトップへ