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災害への備えは知る力

災害への備えは知る力

投稿日時:2020年10月27日(火)

 2017年10月。全国的に多くの被害をもたらした台風21号が、多門院地区黒部で土砂崩れを引き起こした。それから3年。復旧を果たした同地区では、住民らがそれまで以上に防災意識を高めた日々を送っている。

 土砂崩れの復旧工事は2018年9月に始まり、今年7月末までの計675日間が費やされた。山崩れの復旧や渓流内にたまった土砂の流下を防ぐための工事では、生コン車200台分のコンクリートが使われ、軽トラック250台分の土砂が掘られたという。今後も同様の被害を受けないように、谷には治山ダムが設置され、住民の安全を守る環境が整えられた。同地区では、1953年9月に発生した13号台風での被害の記憶が、今なお色濃く残っている。地区内の死者は2人、全半壊家屋は9戸、河川および道路、田畑全流出、山崩れ数十か所と、壊滅的な被害を受けた。そんな過去の試練を乗り越えた地区は、「防災力を高め、二度と地区内で被害を出さない」との強い思いで団結力を高めている。

【環境を知って 高まる防災力】

 ダムが完成に近づいていた今年6月、同地区で住民による治山ダム工事の見学会が行われた。14人の子どもたちが参加した見学会は、多門院長生会(新谷一幸会長)が企画。これまでに何度も自然災害で大きな被害を受けてきた歴史について、子どもたちが学ぶ場として実施された。当日は実験装置を使用し、土石流を再現。治山ダムが有効に機能する様子を実際に見ることで、子どもたちは理解を深めていた。「ダムがあれば山の土壌が守られて、豊かな森が育つ。そうなれば街は被害に遭いにくい」と、解説役の府職員が話すと、参加者たちは大きく頷いていた。同地区子ども会から参加していた真下一椛さん(11)は、「みんなが出したお金と、人の力でこんなものが作れるなんて」と驚いた様子だった。防災の基本は、環境を知ること。歴史や風土、防災の備えについての理解を共有した地区住民。災害の季節を迎えている今も、防災力を発揮することだろう。

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