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平和への願い舞鶴から シベリア抑留、引き揚げ資料候補に ユネスコ世界記憶遺産登録 来年5月可否決定「やっとスタートラインに」【舞鶴】

平和への願い舞鶴から シベリア抑留、引き揚げ資料候補に ユネスコ世界記憶遺産登録 来年5月可否決定「やっとスタートラインに」【舞鶴】

投稿日時:2015年06月17日(水)

 日本ユネスコ国内委員は6月12日、ユネスコ世界記憶遺産登録を目指し、申請のあった4件の国内選考を行ない、候補枠2件の内の一つに、舞鶴市から申請のあったシベリア抑留と引き揚げ関係資料を選んだと発表した。知らせを受けた多々見良三市長は「多くの方々の後押しのおかげと感謝し、感無量の思い。やっとスタートラインに立てた」と述べた。早くて戦後70年にあたる来年5月に登録の可否が決まる。国連教育科学文化機関(ユネスコ)に、国内から舞鶴引揚記念館所蔵の抑留と引き揚げ資料▽京都府立総合資料館所蔵の東寺百合文書▽柳原銀行記念資料館(京都市)などの全国水平社創立宣言▽知覧特攻平和記念館(鹿児島県南九州市)の特攻隊員遺書が申請されたが、国からの推薦は1国2件までのため同国内委員会に差し戻され、抑留関係資料と東寺文書が候補に選ばれた。ユネスコでの審査は2年に1回行なわれる。舞鶴市は、戦争の記憶が風化する中、引揚体験者たちから抑留などの史実を後世に語り継ぎ、平和の願いを発信したいとの熱い想いに応えたいと、2012年7月に記憶遺産登録への取り組みを表明。東京女子大学の黒沢文貴教授らをメンバーに有識者会議で、資料の意義や選定を行い、市と姉妹都市のロシア・ナホトカ市に協力を求めた。また、市民団体も申請を応援しようと署名活動を展開し、国内外から4万2000筆以上を集めた。引揚記念館にある1万2000点の資料から570点を選んで申請した。抑留生活や望郷の想いを白樺の皮に綴った「白樺日誌」、抑留先の夫と日本にいる家族の間でやりとりされ、互いを思いやる文面のはがき、抑留中に労働の様子などを描き没収を逃れて持ち帰られた絵画など、絶望的な状況の中でなお生きる希望や命の強さなどを伝える資料だ。同国内委員会はこれらの資料について、市文化財に指定されておりそれに対応する保存管理がなされている▽市と姉妹都市であるナホトカ市の理解と協力があり、より広い視点から世界的な重要性が説明されている▽絵画、日記、手紙など記録媒体の多様性などの点を評価した。この日午後8時ごろ、候補の知らせを受けた多々見市長と尾関善之市議会議長は、赤れんがパーク4号棟で記者会見した。多々見市長は「資料は普遍的な主題を含む記録であり、戦争の悲惨さや平和の尊さを広く世界に語り継いでゆけると強く確信している。登録が実現するよう資料の活用と保存、記念館の環境整備などに取り組みたい」と語った。実務を担当した山下美晴館長は「市民の皆さんや全国の方からいただいた気持ちが原動力になりました。この喜びを引揚者と分かち合いたい」と話した。市政記念館ではこの日夜、舞鶴を舞台に引き揚げを描いた音楽劇「君よ生きて」の演出家と音楽家を招き、市民有志による交流会が開かれ、多々見市長らも出席し、市民から祝福を受けた。署名活動に取り組んだ舞鶴自治連・区長連協議会の倉橋貢会長は「自治連始まって以来のエネルギーで署名を呼びかけた。熱意が通じたと思うと、涙がじわっと出て来た。今後も全力で協力したい」と喜ぶ。NPO法人舞鶴・引揚語りの会の谷口栄一理事長は「次世代に語り継ぐ責任を強く感じました。新たな目標を定めて活動を続けたい」と話し、参加者たちと握手を交わした。

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