最新の記事

  

医療充実に大きな一歩<br>人手不足でひっ迫する現場に光<br>喀痰吸引等研修を開催<br>介護士のスキルアップ目指す

医療充実に大きな一歩
人手不足でひっ迫する現場に光
喀痰吸引等研修を開催
介護士のスキルアップ目指す

投稿日時:2022年05月03日(火)

 人口8万人にも満たない舞鶴市には、市民を支えるべく公的4病院がある。しかし、医師不足をはじめ医療体制などに対する市民の不満の声は絶えない。「充実した医療」に向けてできることは何か。かけがえのない命のそばにある看護と介護の両業界。10年前、両者が手を取り合うように位置付けられた「喀痰吸引(かくたんきゅういん)等研修」がついに当地で開催の時を迎えようとしている。

「メディカルサポート千鶴」の3人と研修の開催に向けて話し合う田畑さん(右)

 少子高齢化が急速に進む中、人手不足に悩むのは看護・介護両業界とも同じだ。そうした状況を踏まえ国は2012年、社会福祉士及び介護福祉士法を一部改正。「たんの吸引・経管栄養」は、これまで医師や看護職員のみ実施可能だったが、介護福祉士及び一定の研修を受けた介護職員も「たんの吸引等」の行為を行えるようになった。
 そこで求められるのが喀痰吸引等研修であるが、そうした医療的ケア(喀痰吸引等)を指導するにあたり「指導看護師」の存在が必要不可欠となった。指導看護師とは、看護師資格を有する者が一定の講習を受けることで取得可能となる資格。
 「これは素晴らしい取り組みだと、いつ声がかかっても指導できる態勢がとれるよう、次々と看護師たちに受講を促しました」と当時を振り返るのは、長く看護師として医療現場の最前線に身を置いた市議の田畑篤子さん(64)だ。
 ただでさえ人手不足にある看護師は、一人当たりの仕事量が多くなる。介護福祉施設等からの救急搬送も日常的にあったことから、介護職員が対応できるようになれば、搬送されてくる人や看護師の負担軽減にもつながると期待したという。
 多忙な日々の合間を縫って、迅速に資格を取得し準備万端で待つ看護師たち。しかし、いつまで待っても当地で「喀痰吸引等研修」が行われることはなく、その声がかかることもなかった。
 【分担と連携で看護師の負担軽減を】
 看護師長として医療現場を束ねる中で目の当たりにした現状、現場の切実な声を届けるべく、これらの課題解決を胸に市議に転身した田畑さん。
 現状に光が差したのは、京都府登録研修機関の「メディカルサポート千鶴」(京都市)との出会いだった。
 全50時間におよぶ研修を受けるには、これまで福知山市や京都市まで出向く必要があり、二の足を踏む施設が多かった。また遠方ともなれば移動や宿泊等で拘束時間は長く、費用もかさむ。介護施設においても人手不足は深刻で、研修に行かせることで現場に更なる人手不足が生じることも、躊躇する一因となっていた。
 市内の主要福祉施設などをいくつも訪問しながら田畑さんは、これら施設の声や介護士の生の声を拾いあげて回った。介護士の中には、目の前で苦しむ入所者を前に「自分に技術さえあれば」とスキルアップに前向きな声も多くあったという。
 こうした需要に応えられるようにと関係各所に働きかけた結果、ようやく舞鶴市で6月から始まる「喀痰吸引等研修」の開催が決まった。
 田畑さんとともに各施設を回ったメディカルサポート千鶴の長谷川裕史代表理事は、「舞鶴の福祉施設は現状の課題解決に対する意識がとても高い」と話し「京都市内では『うちでは必要ない』と門前払いを食らうことが多かった。地方からそうした風向きを変えたい」と力を込めた。
 研修に出向く際ひと時の人手不足は生じるが「その後の環境は改善される」と施設側の前向きな理解あってこそなされる介護職員のスキルアップやそれぞれの意識向上。舞鶴での開催が決意を後押しし、各施設の介護職員らが6月から研修に臨む。
 「研修を通して正しい知識を持つことで、医療的ケアに対する恐怖心はなくせる。知ることで、人の命を救うことができる」と田畑さんらは口を揃える。
 またコロナ禍で混乱を極めている医療現場に対し田畑さんは「介護職員が適切なケアを行えることで、病院への救急搬送は少なくなる。こうした分担と連携により、看護師の負担軽減や医療の質の向上にもつながっていくと思う」と新たな一歩に期待を寄せた。
 ■実地研修のみの相談や受講の際の助成金活用などに関する相談は℡075・205・2742、メディカルサポート千鶴へ。

この記事をシェア!
Management BY
舞鶴市民新聞
当サイトは舞鶴市民新聞社が運営しています
ページトップへ