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京大大学院付属水産実験所 赤れんが造りの本館取り壊しに 【舞鶴のニュース】

京大大学院付属水産実験所 赤れんが造りの本館取り壊しに 【舞鶴のニュース】

投稿日時:2003年03月11日(火)

国内では珍しいモルタル塗りの本館

 長浜の京都大学大学院付属水産実験所の赤れんが造りモルタル塗りの本館が、近く取り壊されることになった。昭和4年(1929)に建設された旧海軍火薬廠の元庁舎で、戦争を伝える近代化遺産ともいえる。外壁がモルタル塗りのれんが造りは国内では珍しい。外見かられんが造りと分からず、市内のれんが建造物の調査対象からはずれていたが、昨年調べた専門家は学問的には最も貴重な建築物とも指摘している。本館の保存を求めてきたNPO法人・赤煉瓦倶楽部舞鶴は、姿を消すことに「非常に残念」としている。
 本館は2階建て、建物面積1766平方メートル。爆薬を製造する工場の庁舎で、戦後の同22年に京大水産学科がここにでき、本館として使用。同47年に同科が移転後は実験所となり、研究室などに使われた。約20年前に壁の一部をはがしれんが造りと判明。が、普段訪れる市民も少ないため話は伝わらず、日本ナショナルトラストが平成8年、市内の赤れんが建造物約120件の報告書を作成した時にも、調査からはずれた。
 取り壊し計画をきっかけに昨年、赤れんが博物館顧問で、建築技術史が専門の北海道浅井学園大学の水野信太郎教授(47)が調査。明治30年以降はれんががむき出しの建物が一般的な国内では、モルタル塗りのれんが造りは珍しいとした。
 さらに、大祥12年の関東大震災以降はれんが造りの公的建築物は日本では全く建てられなくなったと信じられてきたが、昭和以降も海軍がれんが造り建築物を建てていたという新しい事実が最近やっと明らかになったとした上で、「その実例として愛知県など分かっている範囲内では、今回壊される舞鶴の事例が一番古い。その意味で学問的には貴重な建築物」と指摘する。
 建物は雨漏りなど老朽化が目立ち、大学では一昨年、保存して使う改修も考慮して建物を点検したが、傷みがひどく、耐震構造工事に約2、3億円かかるため取り壊しを決めた。れんがによるまちづくりに取り組む同倶楽部舞鶴は、同年に調査と保存を大学側に求めたが、当初の方針は変わらず新しい研究棟がすでに完成した。取り壊しは3月12日か13日から始まるという。
 昭和37年から10年間、学生、職員として本館で過ごした実験所所長の林勇夫教授(61)は「屋上に上がり海を眺めて研究のアイデアを浮かべた。残したいとの思いはあったが消えることになり寂しい」と話している。同倶楽部舞鶴理事長の松井功さん(50)=余部下=は「保存を訴えてきただけに非常に残念。今回のことをきっかけに今後も未確認のれんが建造物の調査に力を入れたい」と述べた。

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