-「ムラサキウニ」- ほんのり海藻の香り【舞鶴・若狭水中散歩】

-「ムラサキウニ」- ほんのり海藻の香り【舞鶴・若狭水中散歩】

投稿日時:2015年9月18日

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大学院生の頃、研究室で寿司屋を訪れる機会があれば、率先して外国人留学生の横に座るように心がけていた。順次握ってもらえる寿司ネタについて説明するのは、英語の練習にちょうど良い。玉子に穴子に光りモノ、そしてクライマックスにウニが来る。大抵の外国人はウニを食べたがらない。そこで通訳の褒美として、筆者は大好物であるウニの軍艦巻きの2カン目にありつける。今思えば、かなりセコい戦術である。写真のムラサキウニは、本州沿岸でもっとも普通に見られる種類のウニである。春先から初夏にかけて伸びに伸びた海藻を、ウニたちはむさぼり食い、そして7月に産卵のピークを迎える。そんなウニだから、ほんのりと海藻の香りがする。本州沿岸の健全な磯では、海藻が育ち、それをウニが適度にかじり、イシダイなどの魚がウニを捕食する。もし磯魚を獲りすぎてウニの天敵がいなくなると、まずウニが海藻を食べ尽くして磯焼けとなり、やがて不毛の海となる。そんなバランスを考えて、魚もウニも海藻も、適量ずつをありがたく収獲してゆきたいものだ。毎年7月、このウニを求めて高校生が舞鶴を訪れる。京都教育大附属高校の実習では、ウニを受精させて卵から発生する様子を顕微鏡で観察する。そして、ウニのいる磯でシュノーケリングし、ウニがどんな環境で暮らしているのかを観る。実習を受けた高校生の中から、海の生物を研究してくれる人が現れることは、それほど期待していない。むしろ、いろんな分野へ将来はばたく若い人たちに、海の環境のバランスの妙を知ってもらい、そしてこれらを守る意識を高めてもらうことが最大の意義だと思っている。卵を産ませるのに必要なウニは、若狭湾の某所で採集する。そこの駐車場へ集金に来たおばちゃん、筆者が集めたウニを眺めて一言。「ここのウニは、おまぇはんと一緒で、ガラはでかくても中身は空っぽや」初対面のおばちゃんにそこまで見切られて、笑うしかない筆者であった。
写真=ワカメにかぶりつくムラサキウニ。音海の水深5メートルにて