海底でかくれんぼ

海底でかくれんぼ

投稿日時:2016年8月5日

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 マゴチは砂地の海底に身をひそめる大型の魚である。2年で体長40cmに成長し、最大で1mにもなるそうだ。口は巨大で、通りがかった魚にとびついて捕食する。胸びれも大きく、これを素早く動かして猛ダッシュをかけることができる。しかし長い距離を泳ぐのに適した体ではなく、スタミナは乏しそうだ。
 キス釣りをしていてよく一緒に釣れる魚もコチと呼ぶが、これらの多くはネズミゴチなどのネズッポ科の魚である。ネズッポたちは小さなおちょぼ口で、普段は海底の小動物を食べている。このため、ゴカイを餌にした仕掛けをゆっくり動かすとよくかかる。これに対し、魚食性のマゴチを釣るには、活きた魚を餌に使うか、または魚の形をしたルアーを投じることになる。ネズッポは天ぷらで、そしてマゴチは刺身で頂くのが一般的だ。
 アカアマダイやヒラメの人工ふ化稚魚を海に放流したあと、周囲に刺網を仕掛けると、大きなマゴチが獲れることがあり、これらの胃の中を調べると、放流稚魚が大量に出てくる。人工的な条件で飼育された放流魚は天敵の怖さを知らないため、マゴチを捕食者として認識できず、簡単に食べられてしまうようだ。
 一方、マゴチにも天敵がいる。海鳥に上から狙われることもあるだろうし、うかつに海底を離れればサワラに襲われることもあろう。砂に身を隠すのは、餌の小魚をだますためだけでなく、自らも天敵に見つからない工夫と言える。
 マゴチの旬は夏とされる。手元の魚料理の本によると、刺身は氷水をくぐらせた「あらい」にするのが最高とある。幸運にもマゴチが入手できた折は、この方法で頂いている。横方向に骨が飛び出ており、さばくときには注意を要する。口の中で甘みの広がる白身で、本当においしい。

写真 2004年8月,宮津市田井の水深3m、アマモ場の近くで撮影したマゴチ。体長は50cmほど。