待ちわびた営業再開

待ちわびた営業再開

投稿日時:2020年7月21日

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店主の若井さん(右)と常連客の女性

 2018年に国の登録有形文化財に指定された老舗銭湯の「若の湯」が、ボイラー交換等の改修を終え、半年ぶりに営業を再開した。年季の入った浴室には常連客らの笑い声が響き、活気に満ち溢れた日常が戻ってきた。



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 今年1月、女将の若井康江さん(66)は大きな決断に踏み切った。銭湯経営の屋台骨ともいえるボイラーの設備更新だ。
 大きな費用が必要となる工事に、最初は躊躇したという若井さん。「今回ばかりは諦めるしかないか」と考えていた気持ちを吹き飛ばしたのは、「気持ち良かった」と発せられる常連客らの喜びの声だった。廃業へと傾きかけていた若井さんの胸の内に、店を永らく支えてくれた人たちの「日常の喜び」を奪うわけにはいかないという使命感が沸き起こった。
 しかし、設備の更新は難航を極めた。若の湯の創業は1903(明治36)年で、全国でも有数の老舗だ。1923(大正12)年に建てられた現在の建物は、2018年に国の登録有形文化財に指定されたことが示す通り、経年劣化による損傷が激しかった。
 半年間にも及んだ設備工事の間、若井さんは常連客の運転手も買って出た。毎日の風呂に困る人を、週に5回は近場の銭湯「日の出湯」に送迎した。多忙な中ではあったが、そうした日々の触れ合いが若井さんのやる気の源になっていた。世間はコロナ一色で、再開への不安を感じることもあったが、休業に入ってからちょうど半年になる7月10日、若井さんは「若の湯」の営業再開にこぎつけた。
 「浴槽に湯が入った時は、本当に感動しました」と、若井さんは喜びの瞬間を振り返る。銭湯を取り巻く環境が全国的に厳しさを増す中で、選んだ老舗存続への道。その道程は今後も困難なことに疑いはない。しかし、支援してくれる人たちのあたたかい気持ちと、常連客達の笑顔が日々の支えになっている。
 若の湯の休業期間中、若井さんに日の出湯への送迎で世話になっていたという常連の女性は、「再会を待ちわびていました。ここの湯につかってから寝ると、眠りが深いんです。本当に活力の源になっています」と笑顔を見せていた。
 若井さんは、「とりあえずスタートすることが出来てうれしく思います。新たなボイラーでの湯の調整は難しく、これからも勉強の毎日です」と前を見すえていた。
 当地の誇る老舗銭湯。その新たなスタートにエールを送りたい。
 今月26日には、営業再開を祝して、「第2回若の湯まつり」が開催される。主催はKOKIN銭湯部。当日は銭湯の開店を前に、「若の湯ビアガーデン」をオープン。万願寺串カツや万願寺天ぷらの他、淡路島ハイボールやレモンスカッシュも楽しめるという。
 また現在、クラウドファンディングでの支援の呼び掛けも進めている。