引き揚げ”次世代”が発信

引き揚げ”次世代”が発信

投稿日時:2019年2月15日

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クロの物語を演劇で披露する児童たち
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当時を再現した自作のスプーンを手にする山下館長(右から2番目)と長嶺学芸員(右)

 新舞鶴小学校(立山美都子校長)6年生の児童たち84人が8日、シベリア抑留・引揚の歴史を発信するミニ博物館「新小引揚記念館」を体育館内に作りあげた。1学期から学び準備してきた集大成の発表で、演劇や体験ブースを通して、シベリア抑留の過酷さなどを保護者や地域住民に伝えていた。



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 平成23年から市内の小学校では、6年生時に「ふるさと学習」として「引揚記念館」を見学し、引き揚げの歴史について学ぶ教育を続けている。
 児童たちは「総合的な学習の時間」でさらに深く学んでいく中で、学んできた史実を発信しようと提案。各チームに分かれてテーマを決め、発表に向け取り組んだ。
 「抑留者の食事」「クロの物語」「シベリアの寒さ」「使われていた道具」など7つ以上のチームに分かれ、テーマについて深く調べた。各チームのブースを体育館内に設置。1日だけの引揚記念館として開館した。
 「新小引揚記念館」と書かれた横断幕をステージ上に掲げ、招待した保護者や地域住民が入館した。



【発表することでより深く理解する児童たち】



 「クロの物語チーム」による演劇では、9人が抑留者やクロ、出迎えた舞鶴の人々を演じた。場面を伝える模造紙を背景に、シベリアで抑留者の心を支え、一緒に日本に引き揚げたクロの物語を力強く演じていた。
 リーダーの西川遥香さん(12)は「演劇にしたことで、抑留者にとってクロが、本当にかけがえの無いものだったのだと改めて感じた」、副リーダーの小西悠徳さん(12)は「抑留者の人の気持ちを表現するのは難しかったが、沢山の人に知ってもらえたと思う。やって良かった」と笑顔を見せた。
 「使われていた道具」ブースでは、9人が「花札」「スプーン」「ナイフ」などを制作し展示。「スプーン」はアルミ板をハサミで型取り、熱を加え柔らかくした後に金づちで整えた。
 副リーダーの木ノ下元喜さん(12)は「材料も道具も時間もないなかで作るのは苦労したと感じたけど、作ること自体は楽しかった。もしかして、抑留者の人にとっては一種の娯楽のようなものだったのかもしれないと思った」と自身の考察を述べ。「当時は僕たちには考えられないくらい大変だったと思う。今、当たり前に思うことが、昔は当たり前ではなかったのだと気付いた」と話した。
 どのブースも体験やクイズで学ぶ参加型で、発表者と見学者が交流しながら引き揚げの史実を伝えていた。学んだことを掲載した自作のパンフレットも制作し、参加者に積極的に声をかけ配っていた。
 舞鶴引揚記念館の山下美晴館長と、長嶺睦学芸員も来館。児童たちと交流しながら各ブースを巡った。
 山下館長は「研究したことを独自のアイデアで発表することは、まさに博物館の取り組み。引揚記念館は“次世代への継承”をテーマに取り組んでいるが、これは一つ飛び越えて“次世代による地域への発信”。本当に素晴らしいと思った。発表内容も想定以上のもので驚いている。舞鶴にとって大きなことだと思う」と話した。
(井上 務)