記憶の継承 着実に~「舞鶴引き揚げの日」に取り組み多彩

投稿日時:2019年10月18日

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中央大学での特別展示の様子
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晴天の下に生徒たちの伸びやかな歌声が響いた

 舞鶴引揚記念館所蔵のシベリア抑留と引き揚げ関係資料が2015年にユネスコ世界記憶遺産登録されてから、4年の歳月が経過した。以来、同館では様々な取り組みを通じて「記憶の継承」に努め、確かな足あとを残し続けている。



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【全国各地で 平和への願いを発信】



 2015年10月10日未明。引揚記念館は歓喜の渦に包まれた。同日午前2時にユネスコ本部のホームページ上で多々見良三市長が発表を確認すると、応援署名活動をした市民らが「バンザイ」と歓声を上げた。それは、史実の継承と平和の発信への大きな弾みとなる、誰もが待ち望んだ朗報だった。その日以来「登録特需」に沸いた同館は、昨年に開館30周年を迎えるなど絶えず話題を振りまき、当地の重要な観光コンテンツとしての立ち位置を盤石なものとしている。
 そんな中、同館が取り組んできた活動は、舞鶴市内にとどまらない。今年に入ってから名古屋市と鹿児島県姶良市で同館資料の展示を行うなど、これまでにおよそ20回は全国各地で巡回展を開催してきた。
「どこへ行っても引揚関係者の方が多いという印象を受ける」と同館の山下美晴館長は話し、「こうした巡回展は記念館への誘客につながるだけでなく、舞鶴に興味を持っていただくきっかけになる」と、その言葉は力強い。
 今月3日から10日には、中央大学(東京都八王子市)の多摩キャンパスで特別展示会を開催。同大の佐藤元英教授が記憶遺産登録資料の調査に携わった縁から実現した展示会は、約3万人の学生を擁するキャンパスでのまたとない発信の機会となった。



【引揚者を迎える歌】



 昨年10月に制定された「舞鶴引き揚げの日」である7日を前に、5日に同館で開かれた平和祈念式典で、若浦中学校全校生徒による「引揚者を迎える歌」が初披露された。
 戦後引き揚げ者を出迎える時に歌われていたが、長い年月とともに忘れられつつあった「引揚者を迎える歌」。10年ほど前に同校の卒業文集の中から歌詞が発見されたことをきっかけに、卒業生が記憶していた旋律とともに復活を目指す動きが本格化した。
 2学期が始まり全校集会で、歌を継承し平和祈念式典で披露することが提案された若浦中では、全校生徒が音楽の授業などを活用し練習を重ねてきた。
 全校集会で生徒に当時の様子を語った山内牧雄さん(84)は「私も一緒に歌った。始業式からの僅かな練習期間で5番まで覚えて見事に歌ってくれたことに感心した。本当に良いことを考えてくれた」と満面の笑みを浮かべた。
「引揚者を迎える歌」は童謡「故郷」とともに優しく清らかに歌い上げられこの日の出席者の心の鐘を鳴らした。
 戦争の記憶が年々薄れつつある中、同館が果たすべき役割は大きい。今後の展開にも期待をしたい。