浮島丸事件 下北からの報告 ⑧約束の紙芝居上演  力強い台詞 下北に響く 観客 臨場感に引き込まれ 地元高校生が取材 映像作品に【舞鶴】

浮島丸事件 下北からの報告 ⑧約束の紙芝居上演 力強い台詞 下北に響く 観客 臨場感に引き込まれ 地元高校生が取材 映像作品に【舞鶴】

投稿日時:2011年10月21日

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写真左=紙芝居の文を朗読する舞鶴市民たち
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写真中=紙芝居の絵を見つめ、話に聴き入る下北市民たち
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写真右=余江さんを取材する青森県立むつ工業高校の生徒たち

「紙芝居が完成したら、下北に持って来るので見てください」。制作者の余江美穂子さん(67)=白浜台=は2009年10月、下北での取材中、浮島丸下北の会の斎藤作治さん(81)らに約束した。それから約2年後の今年8月28日、その日がきた。  当初、余江さんは案内してくれた数人に見てもらえればいいと思っていたが、下北の会が紙芝居を通して事件のことを多くの人に知ってもらおうと、追悼集会の一環として上演会を企画したのだ。  舞鶴の追悼する会でも、事件の背景や強制労働の現場を肌で感じてもらい、下北市民との交流の場にもしようと、会員らに呼びかけ下北に向かうことに。参加者には大切な役割も任された。紙芝居のナレーションや登場人物を演じる声優だった。  上演を控えた8月28日午前中、青森県立むつ工業高校(むつ市)の国際理解愛好会に所属する高校生3人と顧問の南澤英夫教諭が、余江さんを宿泊先のホテルに訪ねた。クラブ活動として応募する平和祈念映像制作コンクールの作品に浮島丸事件をテーマに選び、紙芝居を取材するためだ。カメラとマイクを手にした高校生たちは、若い人に何を伝えたいかなど次々とインタビューした。  事件のことを授業で知った部員の吉田航さん(18)=東通村=は、「伝えられるべきことが、なぜ伝えられていないのかと思った」とその時のことを振り返る。愛好会リーダーの谷藤将樹さん(18)=むつ市=は「事件を知らなかったことが恥ずかしい。戦争の悲劇を忘れないために、若い世代にこの事実を伝えたい」と話す。  約70人が来場したむつ市立図書館ホール。会場からは「舞鶴から10人以上の人が2泊して来てくれた」と、来訪に感謝と驚きの声が聞かれた。いよいよ上演が始まる。余江さんが紙芝居をめくり、絵が中央のスクリーンにも映し出される中、舞鶴市民6人が代わる代わる物語を朗読する。「皆さん、この像を知っていますか?」。会場に力強い声が響き渡った。「この八人の群像が、私達に何かを必死で伝えようとしています」  舞鶴湾での爆沈と救助活動、戦争の歴史、強制労働が語られていく。来場者たちは次第に引き込まれるように、真剣な眼差しで絵を見つめ、話に耳をすまし、時には涙ぐむ人もいる。  冒頭での問いかけが結ばれる。「そうです。八人の群像は、浮島丸に乗ったすべての朝鮮人、何千人もの人達、ひとりひとりの思いを代弁しているのです。釜山へ帰りたい!故郷へ帰りたい!お父さんお母さんに会いたい!」  大きな拍手が送られ、下北公演の幕が閉じた。会場には、満州からの引揚体験を紙芝居にして、語り継いでいる元小学校教諭の高屋敷八千代さん(74)=むつ市=もいた。「たくさんの人が声を出して演じる方法も紙芝居に有効だとわかった。事件の背景もよく描かれ、魂がこもった上演でした。改めて語り伝えることの大切さを教えてもらいました」  練習で朗読陣をリードした演者の1人、北子郁子さん(74)=行永=は「下北で強制労働の現地を見て、年を取った人たちが語り継いでいこうとする想いを聞き、胸に迫るものがあった。台詞を読んでいく内に涙が溢れてきた」と、メンバーとともに高揚感に包まれた。  後日、下北の会から送られてきた手紙の中に、余江さんを取材した高校生たちの感想文もあった。「実際に紙芝居を見てみるとものすごい迫力でした。声優の皆さんの私たちに伝えようと思う気持ちにとても感動しました」。舞鶴市民の想いを受け取った高校生たちが、どんな作品を仕上げるのか楽しみだ。