シリーズ刊行「軍港都市史研究」第1巻「舞鶴編」 舞鶴出身の広島大・坂根教授らの研究グループ【舞鶴】

シリーズ刊行「軍港都市史研究」第1巻「舞鶴編」 舞鶴出身の広島大・坂根教授らの研究グループ【舞鶴】

投稿日時:2009年12月25日

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広島大学大学院の坂根嘉弘教授(53)らの研究グループが、これまで未開拓の分野だった戦前の軍港並びに戦後の海上自衛隊と地域社会との関わりを、政治・経済・社会など多方面から総合的に分析し、その成果として「軍港都市史研究」シリーズの刊行(清文堂出版)をスタートさせ、舞鶴出身の坂根さんが編者と執筆者の1人を務めた第一巻の「舞鶴編」が完成した。1901年の舞鶴鎮守府開設で地域社会が激変したことを、多くの資料を元に初めて具体的に明らかにするなど、大きな成果を示している。明治に海軍の鎮守府が置かれた横須賀、呉、佐世保、舞鶴を中心に、要港部の鎮海(韓国)なども対象地域にし、各軍港に特有の問題や共通点、比較分析の研究をした。「舞鶴編」(A5判、426ページ)は、坂根さん(近代日本経済史)ら6人の研究者がわかりやすい記述で書き、軍事機密で公表されなかった舞鶴の地形図なども載せた。軍港都市は陸軍の軍都と異なり、海軍工厰の併設により、ヒト・モノ・カネの大きな流れが形成され、急激な変革が地域社会に起きた。その一つに、戦前の日本では軍港都市が最も短期間に人口急増と人口減少が発生し、軍人や職人、商人などの人口流動も最も激しいことが分かった。舞鶴軍港の論考では、飯塚一幸大阪大学大学院准教授が、西舞鶴湾を商港として地域振興を図ろうとした舞鶴町と、反対した陸海軍との政治過程を系統的に明示した。地域経済の変容をテーマにした坂根さんは、新舞鶴町などで増えた資産家や米穀流通の構造変化など3点から分析、貴重な所得税調査資料を使いその変貌ぶりを初めて具体的に解き明かした。筒井一伸鳥取大学講師は舞鶴の財政・地域経済と海上自衛隊をテーマにし、舞鶴市財政の中で基地交付金の歳入に対する割合は、他の海上自衛隊所在都市に比べ最も高く、海自隊への依存度が大きいと指摘。防衛省への行政文書開示請求により、従来ほとんど表に出なかった舞鶴地方総監部の契約実績のデータを得て、契約金額は舞鶴市内の業者が70%と最も多く、地域経済への波及効果の大きさを初めて数値で裏付けた。今回の研究は、坂根さんが舞鶴高専教授の三川譲二さんに呼びかけ、05年に発足した舞鶴近現代史研究が母体。参加した同高専の吉永進一准教授ら9人の内、6人が舞鶴高専の現・元教員などで、「舞鶴編」でも4人が執筆している。その後、他の軍港都市を含めた研究グループ「軍港都市史研究会」へと発展した。坂根さんは「最も開庁が遅い舞鶴軍港は海軍内の序列が低い位置付けで、工厰の規模も最小だったにもかかわらず、地域に与えた影響は絶大だった。これまで軍港と地域社会との関係の分析は全くされてこず、初めての本格的な研究のこのシリーズが、今後の軍港都市史研究の基礎文献になると確信しています。舞鶴の若い人たちにも地域の歴史を学んでほしい」と話している。今後6、7年かけ6冊を刊行の予定。舞鶴に関する研究課題は戦後の政治状況などが残っており、今後の続刊に収めたいとする。「舞鶴編」は1冊7600円(税別)。来年1月から各書店で販売される。
【問い合わせ】電話06・6211・6265、清文堂(大阪市)

写真左=シリーズ第1巻目の『軍港都市史研究 舞鶴編』
写真右=坂根嘉弘さん