まいづる文学賞 大賞決定 伊庭 伸 著「風の器」

まいづる文学賞 大賞決定 伊庭 伸 著「風の器」

投稿日時:2017年10月6日

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賞状を手に笑顔を見せる村上政雄さん(81)※本紙 2017年10月6日発行 第3165号より

 本社主催にて公募した「まいづる文学賞」は、6月末日で応募を締め切り、全国各地より64編の力作が届けられた。本紙編集部が中心となった選考委員会で熟考を重ねた結果、市内京田在住の村上政雄氏による「風の器」が大賞の栄誉に輝いた。

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 当地は三島由紀夫の「金閣寺」など文学作品にゆかりも多く、田辺城籠城戦での古今伝授のエピソードなど文芸にスポットライトが当たる稀有な街である。
 地方創生の必要性が声高に叫ばれて久しい昨今、いきおいハード面の充実に主役の座を明け渡すことが多いまちづくり。しかしながら、全国の街が個性を失いボーダーレスとなる中、内面の充実こそが街の活性化に強く求められている。
 今回の公募には、全国各地から実に64編の作品が集まった。応募者の年齢は、20代から80代と幅広い。多くの表現者たちの力作が連なる中、一際輝きを放った作品「風の器」が大賞の栄冠を勝ち取った。受賞者の村上政雄さん(81)【=ペンネーム・伊庭伸】は、昭和11年京口に生まれた。西舞鶴高では文芸部と新聞部に所属し、若い頃より「書く」ことが好きだったという。平成26年に仕事から退いてからは、当地を舞台にした作品を綴ることに楽しみを覚える日々。今回の応募は、妻の勧めで決意した。「(受賞は)思ってもいなかったので、ただただ嬉しい」と受賞の感想を述べた。作品は10月下旬頃より、本紙紙面にて連載する。

【選評】戦後間もない西舞鶴の街に暮らす市井の人々が、安定した文体と細やかな情景描写で活写された作品。ほのかに現在の街と重なり合う部分がありつつ、どこか異世界の街での出来事を追体験するような没入感がある。時代が移りゆく中で、たくましく生き抜いていく人々の日常が巧みに切り取られ、「風」に翻弄される人生がひと時「器」に収まる様に、それぞれの人生の尊さが心にしみる。